死んでいる - ジム・クレイス -

死んでいる

死んでいる

 過去の遺産パート2。


 主人公たちは、物語が始まった時点で既に死んでいる。彼らの屍は風に腐らされ、無言のうちに死んでいった動物と同じようにその場に返ってゆく。しかるべき葬儀を行ったならば通らなかった弔いの道を歩む。

 冷淡な描写で腐敗していく二人の人間を捉えている。そのせいか、(不気味じゃないとは言わないけれど)清々としている。本来人間(生物)の死と言うのはこうあるべきなのではないかな、とも思わされる。

 物語は腐敗してゆく二人の過去にもさかのぼる。しかし身を滅ぼすほど愛し合ったわけでもなく、他の誰とも共有できない記憶があるわけでもなく、しかし確実にはぐくまれた愛があった。言葉がなくても通じる空気があった。

 死はなにも残さないわけではない。時に人間はそれによって殺されることもあるが、生かされることもある。めんどうくさい愛しい生き物だ。始終腐ったり食われたりしていながら、なんだか暖かい気持ちになった。

 あとがきに、作者は無神論者である。同じく無神論者であった父の死から無神論を見つめなおしたというようなことが書かれていた。ここに書かれていたことは、数ある答えの中のひとつであったのだな。