欲しいのは、あなただけ - 小手鞠るい -

欲しいのは、あなただけ

欲しいのは、あなただけ

 過去の遺産パート3


 上司が「これ……」とおもむろに持ってこられたのがこの本だった。「どうかなー、ちょっとなー」と仰っていたのでこわごわ読んでみたのだが。

 一途だ。とにかく一途。恋に溺れるということが実に具体的かつ主観的に書かれていて、痛々しい。ところどころぞっとするような文句も出てくるのだけど、それが主人公の切羽詰った思いと絡み合って余計に痛々しい。読んでいると恋に溺れている主人公と一緒に、恋に溺れてしまう。

 理解しがたいほどの情熱と最初は思ったが、改めて考えると肉の痛みやプライドなんて取るに足らないことなのかもしれない。というより、その程度の他人の力で人は変わらない。それが強さと言い換えてもいいのではないかと思う。

 収められているのは中篇が二つ。「男らしい人」との恋に溺れている話と、「優しい人」との恋に溺れている話。二度と同じ恋はないのだなと感じた。どんな恋であっても、どんな終わり方をしても、その恋から生まれた激情は唯一であるのね、と。そう考えると恋の最中のあらゆる感情が愛しくなった。単純。