思いわずらうことなく愉しく生きよ - 江國香織 -

思いわずらうことなく愉しく生きよ

思いわずらうことなく愉しく生きよ

 過去の遺産パート10


犬山家の3人姉妹のそれぞれの物語。タイトルは家訓である「人はみないずれ死ぬのだから、そして、それがいつなのかはわからないのだから、思いわずらうことなく愉しく生きよ」から。

 なかなか分厚いのは、3人姉妹の物語が一冊になっているからだと思う。長女・次女・三女のそれぞれの「思いわずらうことなく愉しく生きよ」が描かれている。

 長女はDVに遭っている。それをきっかけに家族が集まったり、元の場所に戻ったりするので、一見長女がメイン? と思ってしまうのだが、わたしは個人的に次女の物語が好きだった。奔放な失恋をする次女は一番タイトルどおりの生き方をしているように見えた。というのは、多分自分ができないことをあっさりとやってのける次女がうらやましかったからかもしれない。

 愉しく生きるというのは、日々笑えるということではないということくらい知っている。でも、改めて「愉しく生きる」ということについて考えたりした。

 なかなか、人は人を愛さずにいられないものなのね。それさえ知らなければ、例えば一人の食卓や寝る前の一服なんかが「寂しい」と思わなくてすむというのに。でも、その「寂しい」を「愉しい」に一瞬で置き換えられるというのはステキなことだと思うけど。そしてぬくぬくと家族と暮らして、いまも帰ればすぐに出会えるそれを知っている自分は、なかなか「愉しく生き」ていると思った。

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 なんだかんだ言って、江國さん好きなのよね。今はひとり、帰る家しかないけれど。したたかに、あさましいほどに、また見つけるんでしょうあたしは。