ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね - 岡崎 京子 -

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね

 過去の遺産パート11


 実は、岡崎京子の著書は「ヘルター・スケルター」と「うたかたの日々」しか読んだことがない。本屋に行けば必ず一度は手に取り、古本屋ではぺらぺらとめくっていたにもかかわらず。
 それはさておき、「へルター・スケルター」と「うたかたの日々」は何度も読んでようやく芯の部分が見えてきた。時間がかかった。わたしは惑わされる性質ゆえに、その絵や言葉に翻弄されていたのだ。そして本当に時間をかけて、牧師の帽子に刺さる一対の羽を思うことが、ただただ悲しいと言うことが、手に取れた。
 この本を手に取った理由は、この2冊の漫画を読んでいたからだ。わたしという人間には岡崎京子小説のほうが近づきやすいと感じられた。ただ繰り返される文字の羅列からそれらを読み取る作業は、美しいレースに指を這わせながら目を追うような繊細でいやらしい楽しみ方だった。わたしはそうやって楽しんだ。満喫した。美しかった。悲しかった。途方もなく。