東京湾景 - 吉田修一 -

東京湾景

東京湾景

 過去の遺産パート12

 惹かれあっている男女。女性の勤める「お台場」と男性の働く「品川埠頭」の距離はたったの1km。

 全体的にパンチの弱い話だな、と読んだ直後は思った。けれど、今思い起こしてみてみると、不思議なほど残像が残っている。そもそも、出会い系サイトで知り合った男女であるから、いくらかは距離があり乾いており怠惰で、なにがあろうと仮想現実のような印象を受けたのだけど、後半からぐぐっと生々しくなってゆく。劇的ではないのだけど、主人公のいる風景に血が通っていくようだった。最後の場面が特に好き。

 それにしても、ヒロインに感情移入できない。できないと、恋愛小説は楽しくない。