眠り人形 - 向田邦子 -

眠り人形 (文春文庫)

眠り人形 (文春文庫)

 過去の遺産パート13


 眠り人形、花嫁、当節結婚の条件を収録。

 ドラマ化されていた物語たちのようだが、見たことがない。けれどわたしのまぶたの裏には、それぞれの人物たちが奥行きを持って日常を生きているように見えた。発する言葉は考え、練り上げられたものではなく、ほろりとこぼれてしまった言葉のように思えた。それくらい人が生きていた。

 日常生活で目にするものには、すべて使っている人の物語が閉じ込められている。眠り人形。ガタガタと鳴る戸。釘の出た階段。物語で切り取られている日常以外の日常さえも呼び起こし、想像すればするほど自分の記憶になりそうなほど懐かしい小道具たちを、わたしは愛しく思う。同時に人を愛しく思い、この一冊丸ごと愛しくなった。

 この本を読んだら、いつもより少し家族にやさしくなれると思う。