ひな菊の人生

ひな菊の人生

ひな菊の人生

 この本は2冊セット。1冊だけ出すことはできない装丁の素敵なのろいがかかっています。

 久しぶりに読み返した。たぶん3回目ぐらい。短い物語なので気軽に読めると思いきや、いつも予想以上に泣かされる。途方もなく憧れる死生観がここに詰まっている。

 ダリアという友人がいる、焼きそば屋の看板娘のほんの少しの日常を書いている。だけ。どちらかといえば淡々と温度の高い恋愛も出てこなければ冷ややかな絶望もない。ただそこには、人生がある。

 人生を想像したとき、それは様々な形があるだろう。紆余曲折だったり上り坂だったり丘の上だったり。その中で、ひな菊の人生は宇宙に浮かぶ小さな箱なのだ。そこには焼きそばと憂鬱な雨とおいしい食材が詰まった冷蔵庫がある。引っ越したばかりのがらんとした部屋と同じ静寂で。

 死生観なんていうとひどく重いものを想像するのはわかる。でもみな持っているもので、大層じゃなくていい。むしろ大層なわけがない。だって今生きているし、今この瞬間も死んでいる人がいるということなのだから。

 寂しさを紛らわせる本はたくさんあるけれど、寂しくなくなる本は希有だと、あたしは思う。