夕子ちゃんの近道

夕子ちゃんの近道

夕子ちゃんの近道

 けっこう前に読み終わっていたんだけど、書き忘れてた。

 淡々とした、平坦な、日常。ドラマチックなことはあまりない。というかドラマチックに書いてない。だから余計にゆるーーーく、気持ちよーーーく読める。なにか用事をしている間に読んだとしても、時間を緩めさせてくれる。長嶋さんの小説の素晴らしいところ。あと会話の妙なずれ方とかもう大好き。

 古道具屋「フラココ屋」のご近所さんばかりが出てくる。人々はみな平和で普通で、ある意味では普通じゃない感じの人ばかり。もう今や普通だの普通じゃないだのどうだっていいんだよ。そこに「ある」日常が「ある」んだからさ。

 必要な退屈ってあると思う。なーんだかな、もうゆるっと一日終わっちゃったな、だとしても、その退屈は人生において意外と大事だったりするんじゃないか?

 終盤、主人公が夕子ちゃんに切望するところがある。たった3行の「願い」だ。わたしはそこがもうたまらなく好きで、うっかり泣いてしまったぐらい好きだ。主人公がそう思えること、夕子ちゃんが全然わかってないこと、おじいちゃんが倒れちゃったこと、まるで関係なく流れていく日常。

 わー、もう、文学はこうでなくちゃ。この3行のために読んでいたんだな、と思った。

 平和で安全で、でも全部本当はみんな近道を「知っている」人たちの、ちょっと奇妙で当たり前の世界をどうぞ。