11 eleven

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11 eleven

 この本は気が弱っているときに読んではいけない。正気のときでさえ怪しい。それぐらいの引力を持っている。

 この人の文章はとても読みやすくて美しくて惹きつけられる。でも、それが故に入り込んでしまうと戻れなくなりそうなほど狂った世界に迷い込んでしまう。これを「美」というか「醜」というかは読み手次第。

 第1編の「五色の船」は一番好きだ。好きだが狂ってる。完全に狂った人たちが狂った世界の戦前を生きている。件というと百〓先生が真っ先に思い出されるのだが、その不気味さが一遍丸々だ。正気でいろというほうが無理じゃなかろうか。そして登場人物たちも異形なのだ。異形でありながら「普通」に思い、通じ合い、真実を知る。怖いけれど目が離せない。

 個人的には「テルミン嬢」が好きだ。ナノマシン医療と音楽療法を受けている女性の話。これもまた、狂った話ではあるけれどSFでありつつ観念的で、最後わたしには救いが見えた。救いなのかどうかは分からないが、とにかく「生きている」ことに違いがないのは「救い」じゃないか。

「YYとその身幹」はほんの少し春樹を思わせる。とびきり美しいことは幸福なのだろうか。彼女は幸福だったのだろうか。彼女を許し続ける男たちは幸福なのだろうか。

「土の枕」で締めくくられるのだが、この物語も短編でありながら長編並みの読み応え。そうか、そこに落とすのか。なんてこった。様々なところで発表した短編を集めたものだというのに、この構成は美しい。ため息しか出てこない。

 ただし、本当に心が大丈夫なときに読むことをお勧めします。本当に。