七夜物語(上)

七夜物語(上)

七夜物語(上)


 相当の読みごたえですよ。約450頁もある物語ですから。しかもまだ、上巻。下巻が楽しみでしかたない。

 主人公は小学生の女の子と男の子。「夜」と呼ばれる不思議な世界と現在(いま)の小学校生活が交互にやってくる。「夜」と呼ばれる不思議な世界では三人称のような一人称のような、なんともおぼつかない文体になって、このおぼつかなさ、危うさが川上ファンタジーだなと思う。文体だけの問題じゃないけれど。彼女の小説もまた完全に計算された表現力(ひらがな・漢字・擬音語・擬声語のあらゆる手段を尽くして)で作品にしている。まったくもって恐ろしい。真鶴を読んだ時ほどの恐怖感と絶望感はないけれど、行ってしまったら戻ってこれなくなりそうなほど、魅惑的な世界です。

 小学生のころの自分をうまく思い出せない。でもこの小説に出てくる二人の子のようにめきめきと日々、本当に1分1秒で成長していたんだと思う。この二人はめきめきと成長し、試験に受かったり、危うさに気づいたり、自分の中の嫉妬や劣等感や憎悪に気づく。

 ファンタジーって、難しいもんだと思う。たとえば、それが現実的にあまりに苦しい物語であったら、嘘でもいいからハッピーエンドであってくれと思ったりする。映画の神童のときのように。しかし、グリム童話イソップ童話、マザーグースなんかはかなり気味が悪いし気持ち悪い。でもそれもファンタジーだと思ってる。自分におけるファンタジーの定義がなかなかできない。多分単語を間違えてるんだろうな。

 この物語ではあえて「夜の世界」で描かれているけれど、上巻の最後のあたりに出てくる仄田くんと野村くんのようにリアルに成長する。乗り越える、といってもいい。その真っ最中にいるときには分らないこと、嫌悪してしまうことが、本当は大切なことなのだと、この本を読めばわかるんじゃないかな。

 上巻の終盤でさよが思う。

なんだか、あれからあたし、ずいぶん年とっちゃったような気がする

 いやいや、冒険はこれからだよ。でも、きっと君たちの1秒はわたしの1秒とは違う、ミエルのようなはちみつ色の濃厚な1秒なんだよ。

 子供のころに読んだらどう思ったのか。もう子供ではないからわからないけれど。ささ、下巻に突入です。楽しみです。そしてこれ読み終わったら、また真鶴読もう。あれは彼女の作品の中で一番すごいと思ってる。