生きることは物語を作ること、をテーマに日々哲学するブログ

生きるとは自分の物語を創ること

日々のじだんだ ~見習いみかん農家4年目~

うつくしい人

うつくしい人

うつくしい人


 初めて読んだ西加奈子さんの小説

 疲れた主人公が瀬戸内のリゾートホテルではっちゃける話。さっぱりとした読後感。気持ちがいい。

 主人公はとても自意識過剰で他人の苛立ちに過敏で「疲れて」いる。疲れから開放されるために瀬戸内のリゾートホテルに一人旅に出る。親の金で。住まいも生活も親の金で養ってもらえるほどお金持ちなのに、彼女は働いていたのだ。その仕事を辞めて旅に出た。

 途中までがしんどいのなんの。読んでるのが辛いっすよーと言えるのは、このさっぱりと終わったひとりの三十路の復活と、あらすじを読んだからだ。あまりにも気持ちがいいので、疲れてるであろう友達に勧めたくなる。

 豪華なリゾートホテルの図書室(恐らくオーベルジュ土佐山の図書室のような)で蛇口が壊れた水道のように涙を流してよれよれになって、ようやく彼女は「疲れ」から解放される。図書室でたまたま知り合ったマティスと坂崎と、ただ写真を探すためだけに本を手に取る単調な作業をする宿泊期間が決まっていたから、そこまで一生懸命になれたのだろう。そのの中で、姉を透過して自分に出会ったんだろう。だから「うつくしい」という言葉が出てきたのだと思うし、もう彼女は自分を惨めに思わなくなるのではないかな、と思う。

 コアラのマーチ食べながら電話もできたしね。なんだか清々した。わたしはあまり疲れてはいないはずなのに。

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 この人の本を敬遠していた理由を思い出した。猛烈に本を読んでいたころ「キミって『となり町戦争(三崎亜記)』の女の人に似てるよね」と当時の課長に言われ、その後「西加奈子って人の『さくら』っていいよ」と言われたので、なんだか反発しただけのことだった。この本を読んで「さくら」も読んでみようと思った。遠回りしたわ。

 しかし、となり町戦争の香西瑞希(義務的に主人公の妻になる女)に似てるって嬉しくないよね。確かに途中から機械的でなくなるけど、中盤まではきっちり義務として生活を、性生活まで義務的に完璧にこなす人だもん。勧めてくれた課長に問いたい。どこが似てるんですか。場所によっては怒りますよ。