- 作者: 梨木香歩
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1999/12
- メディア: 単行本
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リカちゃん人形が欲しかったのに日本人形を祖母から贈られた女の子のお話し。最初の1晩は残念な思いしかないものの、りかさんの魅力に女の子も魅了され、魅力的な女の子に変身する。
人形は人を模して作ったものだ。うちの実家にも日本人形と雛人形、手毬を持った人形がある。もうしばらく出してないと思うけれど、この本を読んだらたまには出してやりたくなった。人形は己の力では歩くこともできないのだから。
りかさんと一緒に食事するうちに、りかさんと話ができるようになる。りかさんはほかの人形とも話ができる。りかさんを通じて友達の雛人形や水汲み人形と対話する姿は、人によっては「恐怖」かもしれない。だって人形がしゃべるんだよ。とうとうと自分の物語を語ったり、一方的に要求されたり、大忙しだ。しかし主人公はそれを楽しいと思う。
戦時中に焼かれた西洋の人形は痛ましく、友達の祖母の姉にあたる人が悲しみに暮れるシーンは残虐だ。しかし戦争とはそうであったのだ。事実、アメリカと日本は戦争し、一時期でも日本はアメリカを憎んだのだ。
人間は長生きしても1世紀しか生きない。人形は大切に扱われたら何世紀も生きる。しかし、人形は人間のように生きられない。生かされてこそ生きる。雛人形もそれぞれに役割があって、役割からはみ出さない。人間はそこまで義理堅くないから簡単にはみだしてしまうというのに、なんて可愛らしいんだろう。
物語の最後で主人公の女の子が桜の木で染色をする。梅紅に染まった布でりかさんの服をこしらえるのだそうだ。祖母と孫とりかさんと。なんともいえない幸福な風景。梨木さんの物語に出てくるおばあちゃんは、理想中の理想だな。