料理の旅人

料理の旅人

料理の旅人


 読んでる途中に昼飯となりまして。昼飯は豪勢にステーキでした。晩飯は卵かけごはんでいいや。

 料理人たちのインタビュー集です。1940年〜1950年生まれの方々。今では大御所なんだろうな。わたしは料理業界には疎いのでお店の名前とかシェフの名前とかあんまり分からないけど。

「現地修業で失敗しても、何回でもやり直せばいい」
 谷 昇 (「ル・マンジュ・トゥー」オーナーシェフ)
「現地になじまなければ、文化の長所はわからない」
 鮎田淳治 (「ラ・コメータ」オーナーシェフ)
「海外で学んでいる間、日本に手紙を送ることも重要だった」
 佐竹 弘 (「レーネア」料理長)
「ほんとうのイタリア料理を、日本に定着させたくて」
 吉川敏明 (「ホスタリア・エル・カンピドイオ」オーナーシェフ)
「一箇所からの定点観測でわかることもある」
 野崎洋光 (「分とく山」総料理長)
「病気が治って、働けるだけでもありがたかった」
 塚越 寛 (伊那食品工業株式会社会長)
「フランスで知ったのは、土地と料理のつながりでした」
 音羽和紀 (「オトワ・レストラン」オーナーシェフ)
「フランスでは、心から納得できる基準を見つけられた」
 小峰敏宏 (「ラ・ターブル・ド・コンマ」料理長)
「疲労が溜まって、西麻布から軽井沢に移住を決めました」
 田村良雄 (「エルミタージュ・ドゥ・タムラ」料理長)
「海外で感じたのは、信頼ってありがたいんだということ」
 田代和久 (「ラ・ブランシュ」オーナーシェフ)

 料理は土地に根付いたもので、日本には日本の料理がある。フランスにはフランス料理、イタリアにはイタリア料理。当たり前の事だけど、すぐそこで採れるものを一番美味しく提供するのが料理人の第一の仕事。どの料理にも歴史があって、登場する料理人たちはみな現地に赴いて修行している。郷に入っては郷に従え、で辛酸を舐めた経験もあるようだけど、どの料理人たちも「苦労した」と言うより「楽しかった」と言う。身になる経験を積まれた方々なんだな。

 貧乏な人からブルジョワな人まで様々だ。スタートラインは違えども、どの料理人も一度や二度じゃない挫折を経験してる。でもカラっと笑い飛ばしたりしてくれて、下手な自己啓発本より余程ためになるなと思った。

 美味しい料理を提供することは当たり前で、それ以上を求められる。その上、経営しなければならない。今日の利益1万円を明日握りしめて仕入れに行くなんて、会社員をしていたら経験しないスリルだ。同時にひどくリスキーな職業であることを痛感する。水モノと言われるわけだ。

 経営者になるということは、好きなことだけをやり続けるだけではできない。そこで苦しむ。塚越寛さんは料理人ではないけれど、寒天という狭い業界でどうやって会社を続けていくかを語ってらっしゃる。仕入れを買いたたかない、社員に気持ち良い環境をつくる。とんでも健全で「自分ならそこまでできるかな」と思うけれど、そこまで徹底してやるから現実になるんだろうな。

 82ページ。佐竹さん。自然活動家の畑正憲さんがお店に来られたとき、自分の迷いを問うたことがあるそうだ。

「山に行くと、自然にある花を採ってもいいかで迷うから」と言うと……「それは、日々の義務を果たしてないからでしょう」とおっしゃった。

 料理人さんだけど料理人さん以外の人からも素直に問うことができるってすごいね。そして答えも素晴らしいね。感動する。佐竹さんは料理人でありながら社会とのあり方も考え続けた。自ら「後ろ向きだ」というけれど、わたしは彼の考え方がすごく好きだな。食べるという行為は本能だけれど、外食となると社会と共存しなければ気持ちよくない。もらう分を返したい。

 124ページ。野崎さん。料理人として店を続けるということについて。

 何をしたのかよりも、何をしなかったのかなのではないかな、と思えるようなこともあるんです。
 (中略)本来、身体が喜ぶのはもっと「やりすぎない味」なんじゃないですかね。

 写真家の秋山庄太郎先生からたくさんの事を教わったとおっしゃってる。恐らく野崎さんもたくさんのことを下の年代に教えていると思う。

 221ページ。田代さん。

 同業者である料理人のともだちに自分の作ったものを食べてもらうのって、ぼくは大事なことだと思っています。だって、仲間っておたがいに刺激を与えあえる存在でなければ、対等でいられないでしょ。(中略)個性で照らしあえなければ、仲間ではいられないんですから。

 まったくもって、そうだよなと思う。褒めあうだけだったら伸びない。一皿に対してどれほどストイックなのだろう。それでも「失敗しますよ」と言う。そうだな、失敗はするもんだ。ただ、同じ失敗をしないように創意工夫するんだな。

 ここに掲載されている方々のインタビューを読み終わって、がつがつしてない人達だなと思った。競争ではなく共存していこうとしているのが良く分かる。隣に店ができたなら、隣の店と上手くやっていこう、そういう姿勢。共に料理が好きな者同士であれば成り立つのだね。しかし、どうやって相手をつぶすか、無駄を排除するか、合理性の追求が今の流れだよな。みなさまも仰っているが、時代や流行は変わるものだから、自分の正しいをどれだけ持ち続けるかっていうことだよね。

 社会人15年目ですが、全く異なる業種ですが、とっても勉強になりました。