妖怪アパートの幽雅な日常(1) (YA!ENTERTAINMENT)
- 作者: 香月日輪
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/10/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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部下一押しの「ラノベとは絶対言いたくない」本です。児童書でした。が、まったくストレートな本だ。表現もだし書いてあることもストレート。本当に30分で読めたのでびっくりしたけど、内容はすごく面白かったよ。
ラノベとの線があるのだとしたら、この小説はものすごく真面目に伝えたいことがあるということだろう。言葉はストレートで「おお、若者」と思うところもあるけれど、全く嫌な気はしない。むしろ、なんだか悟りすぎちゃってキミそんな若いのに、と思ってしまう。
13歳で両親を亡くした主人公は中学生活は親戚の家で過ごす。しかし、どうにも遠慮してしまって居心地が悪い。それが中学校生活にも出てしまって、他を拒絶する雰囲気まで持ってしまっているというのだから、悲しいね。しかし心を許せる友人と、たまたま巡り合った妖怪アパートで彼は活気を取り戻し、また、他者との接し方が少しずつ変わってゆく。
妖怪アパートで起こることは、要するに遠野物語のような出来事です。どうにもならない人間の業は、どうにもならんのです。それが1巻では「母と子」という形で出されていたけれど、もっとたくさん出てくるんだろうね。楽しみ。
ちなみに1巻の「母と子の業」は現代でも「幼児虐待」という形で表出している。昔からあったんだよ。ただね、昔の虐待と違うなって思うのは、虐待してる側(母)がもう魂の体をなしてない状態になってまでわが子を虐待しようとするのに対して、今の虐待は完全にわが子を「持ち物」扱いでいたぶって忘れるんだよ。やったことを、忘れちゃう。これはもう生態系としてもあり得ない。だから今の虐待は怖い。
同級生が「不良ぶりっこ」になってしまうところ、悲しいね。でもガチで喧嘩できて良かったじゃないかと思う。結局同級生は本当にチンピラになってしまうのだけど、そういうことも、結局いつかは経験する。悪ぶることと悪いことは別って、あんまり分かってない人多いからな。なんか変だなと思う主人公の健全っぷりは圧巻。優等生って罵られるわなぁ。
妖怪アパート生活から新品になった寮での生活に移ったという部分も、物語としてはアクセントになってていいなぁ。貝のような人間か。確かにそういう人多いし、自分も行く場所に行けばそうなる。同室の先輩のことを話しただけなのに、湾曲して「悪口」としてその先輩に届いてしまう。そしてその先輩は結局寮を出てしまう。弱虫というか意固地というか。コミュニケーションを取るのが怖いのよね。そっちの気持ちも良く分かるよ。
で、主人公は結局また妖怪アパートに戻りました、と。1巻終わり。これ全部で10巻で人気があるから図書館では相当待ちそうだな。まぁのんびり読むからいいや。