真鶴

真鶴

真鶴


 読み終わりました。感想。怖っ。女であることと、家族であることと、母であることを同時に抱えている女は深い闇を持っている。いや、そもそも人の時点で闇は持っているのだろうけど、描きだし方が怖い。

 主人公はまったく身勝手な女だ。相手に男であれと求めたり、家族であれと求めたり、それも好き勝手に求める。男が消えてしまうのも仕方がないと思うほどに。

 娘と母と主人公とで住んでいる。自分の血を分けた者同士が住んでいる。それだけで、一種戦慄のような瞬間が日々訪れる。特に娘が「おばあちゃま」となにかするところ、そこに母は不在でいい。その事実が恐ろしい。けれど、そうやって「離れてゆく」のが子供なのかもしれない。

 主人公につく「女」は誰なのか分からない。不特定でかまわない。女であればいいのだ。それは主人公の消えてしまった夫についていた女でも、見ず知らずの亡霊でも、もしかしたら自らの別の姿であるから、女ならなんでもいいのだ。

 わたしは母になったことがないから分からないけれど、自分と血を分かつ人が自分の分身ではないことは分かっている。だけど、実際に離れてしまった時の心情は計り知れない。自分も母にしていることなんだろうけどね。そういうことを考えることも、若かりし頃はなかった。

 そんなに自らをえぐるようなことをせねばならないのだろうか。自分の在り処を探るために、自分や他人を傷つけねばならないのだろうか。自分の娘だけには弱い主人公に腹が立ちながら、そんなものかもしれないと思った。かつてお腹の中でつながっていた「人」が一番恐ろしいものなのか。主人公も当然母から生まれているわけで、それこそ業としか言えない生命としての反応なのだろうか。

 この重さはなんだろう。真鶴になど行ったことがない。けれど真鶴という場所は雲が低く重くのしかかる。本当は真鶴じゃなくてもいいのかもしれない。むしろ、人は誰しも「真鶴」を持っているのかもしれない。

 本命読み終われて満足。やっぱり手ごたえが違うなぁ。ため息。