- 作者: 坂口安吾
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インタビューズで「桜といったら?」というのがあって、わたしはこれを答えたんですよ。でもね、随分昔に読んだものだから覚えてなくて、再読しました。雨月物語と通じるものが、ここにある。
愛と桜と人間のもつ様々な業とか欲とかどうしようもない本能とか、それを一つの小説に、これほどに美しく描いているものは数少ないんじゃなかろうか。感動して思わず外に出て夜空を眺めてしまった。
ベタだけど、愛ってなんだって思う。誰かを愛しく思うこと、美しい人をほしいと思うこと、手に入れてそれの望むことをかなえること。どれをとって愛と言ってもいい。けれど、本当に人を愛するということは、愛している自分も許容しているということ。どれだけ自分が嫌いであっても、その人と出会い、愛し、欲し、そうしている自分を忘れるほどに没頭すること。それが愛なんじゃなかろうか。
決して一人では成り立たない。生殖の本能だけでも足りない。
山へ帰るというくだりで物語りは終わってもいい。しかし彼は最後まで書ききっている。美しい女に出会って、様々なことをやって、結局山に帰ることにして、そしてそこで見たものは、桜が見せた人の狂気、あるいは愛ではなかろうか。