生きることは物語を作ること、をテーマに日々哲学するブログ

生きるとは自分の物語を創ること

日々のじだんだ ~見習いみかん農家4年目~

丸亀の宝に行ってきた

 食べログで「丸亀の宝」と言われているお店に行ってきた。まさしく、丸亀の宝であった。

 だいたい私は古いうどん屋ほど好きなのだ。もうなくなってしまったオビカ食品(中央市場の中にある業者さんの朝ごはん的なお店)のような、昔からこのスタイルでやってるお店が好きなのだ。もちろん、新しいうどん屋も嫌いじゃないし、美味しければいいのだが、美味しいだけではリピートしない。

 飲食店のリピート率は「居心地の良さ」が大前提だ。椅子の座り心地だとかムードの良さ、あるいは接客の対応など、ある程度は必要かもしれない。実際、居心地が良くてジャズが流れててとういうどん屋も近所にあるが(手打ちうどん 渡辺さん、前はよく行った。今は人が多くて待つことが増えたから行かなくなった。木の葉の天ぷらととり天が素晴らしい店)そういう問題ではないのだ。食う側がどれだけ納得して味わえるかどうかが問題なのだ。

 だから繁盛店で多少並ぶけどってところでも、がもうみたいなところだったら少々我慢できるし、先日行ったラーメン屋は(店に入って食うまでに1時間を要したのだよね、あそこ)もう二度と行かないと思っている。ええ、かなり個人差の出るところだろうって思うよ。

 しかしだな、人から食の楽しみを奪うことは、人から尊厳を奪うことに等しいのだよ。私はこれを香川に来て強く強く感じるようになった。

 で、うどん屋だ。「丸亀の宝」とまで称されているこのお店は、とにかく古くて汚い。しかし、この汚さは時間と仕事が作り出した汚さだろうなって簡単に想像がつく。ここで粉をこね、麺を打ち、茹でているのだ。ずっとずっと、私の生まれる前からずっと。

 この店はゆめタウンに繋がる新しい道に面している。この道ができるまではただの雑多な街中であったそうだ。だからこの道ができることになり、いきなりメインストリート沿いになったという場所。雑多な街中にひっそりとあった神社とうどん屋製麺所が、いきなりメインストリートで日に晒されることになったわけだ。

 ポスティングで気づいたけれど、高松市丸亀市も、仕事で用事があるだろうってところはそれほどすごい町の作りになっていない。すげーなこれ、と感じるのは川沿いと、古い住宅地だ。入り口が分からないとか、道なのか私有地なのか分からないとか、四方を田んぼに囲まれているとか、そりゃもうすごいもんだ。きっとこのお店も、昔はそういう街中にあったに違いない。だって一本道を入るとそういう界隈だもんな。

 私たちが行った時はじいちゃん一人。暖簾を出していないのに乗り込んだ私たちに「もうちょっとだよー」と声をかけてくれた。けっこう不愛想な爺様だが、どことなく優しい雰囲気もある。後で感じたのだが、不愛想ではない。顔がちょっと怖いだけで、とても優しいおじいちゃんだよ。

 ここは太麺と細麺がある。というのは事前にリサーチしていたので、麺ばかりを攻める作戦で行った。私は細麺と太麺を1玉ずつ、冷かけで。塩鯖は冷やしとかけを1玉ずつ。これにお揚げさんとかき揚げ。注文してうどんを受け取って(かけ以外を頼むと、冷蔵庫まで足の悪いおじっちゃんが移動するのでちょっと時間がかかる。塩鯖は「次行くときはおじいちゃんが動かなくていいようにかけにしよう」と言っていた)、かけの場合はすぐそばにある蛇口からかけ出汁を注いでテーブルへ移動する。

 ワクワクが止まらない我々は、水さえ忘れて注文したさ。

 私は冷かけで塩鯖はかけだが、塩鯖曰く「温度はさほど変わらない」だそうだ。うむ、納得である。うどん屋によっては、茹でて水で締めて初めて「うどんが完成」するところもある。釜揚げや釜~は邪道というお店もあるのだ。ここは締めたうどんが「完成品」であるから、冷たいうどんがどんぶりに入ってくる。そこに温かい出汁をかけるので「ぬるい」わけで、冷かけの出汁もさほど冷えていないので「ぬるい」わけで。なんだこの愛嬌は。「料理は温度が大事だ」と普段は豪語する私も、なんか笑って許せてしまう。

 許せる一番の理由は美味さだ。最高、もう最高としか言いようがない美味しさ。出汁もちょうどいい、細麺ももちもちのつるつる、太麺も食べごたえのあるもちもちだが粉っぽさなんて微塵も感じない最高の状態。できあがった直後のうどんだから最高なのは当然だけど、あんなに生き生きとした麺を食べたのは谷川米穀店以来。あんな遠くに行かなくてもこのクラスのうどんが食えるのであれば、宝と呼ぶ以外に何と呼ぶ? 麺の太さは指定しなければ細麺が出てくる。けれど、細麺マジ美味い。


 id:t_katoさんがこっちに来るらしいと聞いたので、何より先にお伝えしたくて記事を書いている。香川のうどん屋はたくさんあるが、昔から続くうどん屋はいつなん時閉店するか分からない。店主が年のため、病気のため、様々な理由で店を閉め、後に別のうどん屋が入る。ここにきて4年目の私でさえ、そんな風景をたくさん見てきた。もう一度行っておけばよかった、いつもそう思う。katoさん、ここは市内だし、絶対に行くべきですよ!!

www.shikoku-np.co.jp

 会計は最後。店の奥の流し台にどんぶりを下げて申告する。しめて830円(安すぎ!!)。天ぷらは独特の「ざくざく」した感じ。今度は私も天ぷらを食べたいので、細麺の中(1.5玉)とちくわ天にしよう。