
- 作者: 中上紀
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
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中上紀さんの長編小説。ファンタジーと言っていいのかしら。内容はamazonさんから。
海の果て、時の彼方、記憶の奥底―どこまで追い求めれば、彼にたどり着けるの?二千年の時を経て、今ふたたび巡り会った男と女。
舞台は中国です。わたしは日本の歴史も怪しいぐらいなので中国の歴史なんて全くと言っていいほどわかりません。しかし、この物語を読んでいると秦の時代に自分が行ったような気持ちになりました。
主人公、亜子は沖縄でニナイカライの話を聞く。そして中国へ留学しある青年と出会う。当然の運命のように中国の古代遺跡から不老不死をテーマに取材というか、これは研究・考察を進めていく。そこでまた青年に再会する。その再開は時空を超え秦の時代であったり、現代であったりする。
運命と言うのが本当にあるのだとしたら、それが決まった道筋をたどるものだとしたら、なんの疑問もなく目の前の不思議なタイムトリップを受け入れられるのかもしれない。結局夢なんですが、夢じゃないとわたしは思う。
ラストで「男の花は石になり女の花は永遠になる」という歌が出てくる。それはずっとずっと古くから言い伝えられた伝承が詩として残っているものなのだな。
不老不死に関する物語や伝承はいくつもある。日本のそれと中国の言い伝えが数億のパズルが組み合わさるようにつながってゆく様は圧巻だった。当たり前に読んできた言い伝えのような物語を「民俗学」として分かりやすく日本で提示したのは柳田國男や折口信夫だが、研究するまでもなくそこに息づき続けている「本当の不思議」は、いまでも全国の小さな山や海にたくさんあるのかもしれない。
歴史も紀行も取り入れて完全な地に足の着いたファンタジーに仕上がっているところは筆者の力量でしょう。良い読み物をした。