- 作者: 長嶋有
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/05
- メディア: 単行本
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長嶋さんの目線があまりに愉快で一気読み。瞼の痙攣がおさまらないよ。
これは物語の中で出てくる電化製品を取り上げ、物語について深く(とわたしは思っている)語る、だけ、だ。あくまできっぱり彼の目線で書かれている。
個人的に思い入れのある物語は嬉しく、全く知らない作品はとても読みたくなる。エッセイとは違う。電化製品オタクの薀蓄でもない。れっきとした書評だ。例えば吉本ばななのキッチンのジューサー。彼が語るジューサーは新しい視点であり、懐かしい視点である。哀しい気分でジョークのレーザーディスク。なんだか空っぽの寂しさを、なんにも悪いものはなかったのに干からびてしまったにんじんを思い出す。全然関係ないんだけどね、にんじんは。小川洋子の博士の愛した数式のアイロン。読むだけで涙がにじむ。まるであの本を読んだ後みたいだ。トレインスポッティングは原作を読んでいないけど映画は見た。映画のことも書かれているけど原作は原作で読んでみたいと思う。
彼の言葉はとぼけていて面白い。そして目線は温かい。彼が題材にした作品をすごーーーく読みたくなる。こういう本は困りますね。