- 作者: 水樹和佳子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2000/05
- メディア: 文庫
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こんなにすごい物語があったとは知らなかった。すごく損してた。完璧すぎる。完璧すぎて怖いぐらいだ。正直言ってこれだけの大風呂敷をどう落とすのか、少し怖かった。がっかりしたくなかったからだ。結果、がっかりしなかった。むしろ感動しすぎて涙の一滴も落ちないほどに。
ある意味では恐怖を感じるぐらいの広い世界観、神・仏・信仰・宗教・人間・業・喜怒哀楽、そして狂気と愛。全てのことをこんなに広げちゃってどうするんだろうと思っていたが、見事に全て昇華されている。ぞっとするほどの完璧さだ。こんな物語が「少女漫画」でくくられるなんて文化が間違ってるんじゃないかと思うほど。
物事には必ずいい面と悪い面がある。それがどれだけ雑魚の悪人だとしても。それが物語りだ。善悪で全て片付けば戦争なんて起こるわけがない。誰かに何かを押し付けて解決したかのように見せかける今の世界は(すべてとは言わないけれど)、嫌いだ。ダヴィンチ・コードの映画のほうがまさにそれだったな。あれは頂けなかった。小説の方ではもう少し善悪を超えた部分があったはずなのに、分かりやすさを求めたあまりあんな半端なエンタメに落ちたんだと思ってる。
わたしはやるなら徹底的じゃないとイヤなんだ。エンタメするならとことん、追求するならとことん、でないと納得できない。
タロットカードに死のカードがある。わたしのライフナンバーだ。無に返り、世が明ける。わたしはこのカードが好きだ。壊さなければ開けない世界があるという意味で背負っているつもり。破壊は悪なのか? それはこれを読めば分かると思う。
永久に続くもの、それは繰り返される生命の営みであって欲しい。そしてそれを信じることが、わたしにとっての信仰、神様はいるけれどいないのだ。
少し前にインタビュー・ウィズ・ヴァンパイアの記事で白鳥ちゃん(id:siratorisiratori)がコメントで「ハガレンの中で敵はホムンクルスです」と言った。わたしはちょっと驚いた。恐らく判断基準は人間か否かだったんだろう。けれど、ではアームストロング姉ちゃんは? 人間のために働き続けた人間をいとも簡単に殺す冷徹な女だ(かっこいー!!)。己の欲望のためだけに動くグリード(最後はリンと同化したけど)は敵で、同じように欲望のためだけに人殺しするキンブリーは味方か? 違うと思うなあ。敵も味方もなかったんだ、あれは。物事は簡単に分別できない。だから物語は生まれる。そして続く。
昨日かな、デブ子とメールで2001年宇宙の旅の話をした。あいつは言った。
HAL9000が電源?切られる寸前まで、注意しかしなかったんだよ。「それをされると私は存在しなくなってしまう」とまで言ってるのに、コンピューターだから人の行動は止められないんだ。
だからディスカバリー号には加害者と被害者しかいない。
HAL9000という加害者と人間という被害者。
そしてHAL9000という被害者と人間という加害者だ。
スターチャイルド?HAL9000の前ではどうでも良い設定だな!!(笑顔)
してやられたり。こいつすげーや。あたしはHALにしかなれなかった。まったくかなわねえーよっ!
ついでにこいつのハガレン論。
ハガレンで悪と読んで良いのはキンブリーだけだろう。あれは確信犯なダークサイドだ。
うきー!!! あたしが好きになるキャラクターはだいたい狂った悪人です。だって純粋だもの、一番綺麗じゃないか。