生きることは物語を作ること、をテーマに日々哲学するブログ

生きるとは自分の物語を創ること

日々のじだんだ ~世界に狂った色彩を~

11 eleven

11 eleven (河出文庫)

11 eleven (河出文庫)

 津原さんの名前をよく見るので、五色の舟を読みたくなって購入。久しぶり。だけど私のなかで最高の短編小説といえば「五色の舟」だ。

 塩鯖は見込みがあるから(あえて上から目線)おすすめしたのだけど、苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。あまりにも可哀そうな話だと。確かに、救いのない人たちの物語かもしれない。

 だけど私は再読してやっぱりこれが最高の短編小説だと思う。とんでもなく美しく、とんでもなく純粋だ。そしてどの文をとっても、単語の一つまで計算され尽くしていることが感じられながら、何一つとして嫌らしくない。相当な変態が書いたものだ。

 私と塩鯖の違いは何なのかなと、しばし考えてみた。たぶん私はこの小説を、異形の者たちの物語だととらえていないのだ。だから可哀そうとも思わないし、辛そうとも苦しそうとも思わない。むしろ、少しの違いのおかげでより魂のままに生きている人たちの、多少乱暴で、多少的外れで、人間にあってほしいと願う良心や善意がある。

 芥川龍之介の藪の中や羅生門(昔の映画のとか)でも似たような気持ちになる。あの人たちは私の中にもいる、だからいたたまれなくなったり、吐きそうになったりする。芥川の小説は基本的に狂気に満ちているから本当に辛い(でも素晴らしいんだけども)。

 この手のSFは今までもたくさんあったと思う。でも圧倒的に違うのだ。これと千年女優は(別に塩鯖と読後感が違うからどうとかはないんですよ。でも同じ作品を語れる相手がいるっていいね。世界が広がるからね)。


千年女優