生きることは物語を作ること、をテーマに日々哲学するブログ

生きるとは自分の物語を創ること

日々のじだんだ ~見習いみかん農家一年目~

インセプション

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 結構前にも見たけど、妄想代理人見たらまた見たくなって。前に見た時は全然理解できてなかったなーと思った。

 インセプションとは「植え付け」という意味らしい。産業スパイ映画だけど、スパイっていうか父と息子のドラマ、愛とは何かを追求した内容だと思う。

 そもそもの舞台は「人の夢に入り込み、潜在意識を読み取ったりアイデアを盗んだりすることができる世界」。渡辺謙が演じるサイトーの依頼で、ある大会社の御曹司に「会社を継がない」選択をするよう意識に記憶をインセプション(植え付け)するミッション。

 最初に見たころは潜在意識のことは「人の脳は95%くらい眠ってるんだよね」程度の知識だった。無意識が現実を創造するという話も眉唾だったし、なんのこっちゃ分かってなかったんだと思う(でもおおむね感想は変わらない。あえて言えば、インセプションの重大さを理解したというぐらい)。

 人が何か行動を起こすとき、そこには過去の記憶が動機になる。それはとてもシンプルなもの。ターゲットになった大企業の御曹司ロバート・フィッシャー(キリアン・マーフィー:サンシャイン2058の主人公役、とても魅力的な目をしている)は父に対してよい感情を持っていなかったため、サイトー(渡辺謙)演じる実業家は「父の会社を継がない選択をするよう記憶を植え付けてほしい」と、コブ(レオナルド・ディカプリオ)に依頼する。コブは自分の罪を帳消しにしてもらうことを条件に依頼を受ける。

 コブの罪は妻殺し。コブの妻モルはコブの夢に現れ続ける。

 この映画のなかでは、インセプションが成功した例と失敗した例の2つが描かれる。成功した例はミッションの御曹司、最後まで描かれないが劇中ではポジティブに終わる。失敗した例はコブの妻モル。現実世界での死を招く。どちらも「記憶の植え付け(インセプション)」が行われただけ。幸せにしようとか不幸にしようというトリガーがあったわけではない。

 そもそも、人の記憶を人がいじることは大罪であっていいとおもう。だけど、少なくとも今の時代は「自らが書き換える」ことしかできない。だからその大罪を犯すとしたら自分で、現実に起こっているいくつかの思い違いが発端の事件は、これに近いのかもしれない、と思う。

 先日から立て続けに見ている今敏監督作品も、根底にはこうした世界観が広がっている。これはもう、科学的に証明することはできないけど真実に近いところにある物語なんだろうと思う。例えば、オイディプス神話みたいな感じ(父殺し、父を殺して父を超える成長物語)。

 妄想代理人の明るい家族計画では、老いた男と、女児と、同性愛者の青年が出てきた。この3人は生殖から遠ざかっている。酷い言い方をすれば種の行き止まりだ。でも果たして生殖だけが人をつなぐのだろうか。違うと思う。人の心は一続きに未来へと続く、終わりがないものだということを、描いているのではないかと思った。

 クリストファー・ノーラン監督も、今敏監督も、ボルヘスの螺旋思考を思い出させる。人は終わらない、世界も終わらない。物理的な世界と、精神世界が混ざり合っているのが現実世界なんだろうな、だから世界は美しいんだ、と思った。

 人って本当にすごいね、不思議だね。こんな不思議な世界観を共有して、理解して、共感して、世界を広げることができるんだから。