夏の日のにんじん

 野菜のにんじんではなくて、スプートニクの恋人に出てくる少年のこと。にんじんは怖いおじさんにとっつかまって先生が来たとき、どう思ったのかな。だって先生だもん。あたしが子供のころは、先生って言うのは自分とは違う生き物だと思ってた。いいことしかしなくって、24時間先生で、まっとうなことばかり言う人だと思ってた。けど、叔父が先生してるんで中学に行ったらなんだか打ち砕かれたんだけど。

 別に言っても言わなくてもいいぐらいの些細なことから、実はあまり人に話しても分かりづらいだろうなあって思う大切なことまで、あたしはよくしゃべる。それが時として誤解を生んでえらい目にあっても、しゃべることをやめられない。

 言わない選択肢はあるけど、あえて隠す選択肢はない。浅はかでもいい。底が見えたっていい。フルオープンが勝ちだ。

 あの夏の日に先生がにんじんに話したことは、あまりに個人的なことすぎてにんじんには正確な意味が分からなかっただろう。ただ、大きくなる過程で何度か思い出すだろう。そういうのが「心の滋養になる言葉」なんだな。

 手短にあったスプートニクを適当に開いて思ったこと。顔あらってきま。