エルサレム賞・受賞の挨拶とわたくしごと

 雑文集はこれを読みたくて買ったようなものですので、いの一番に読みました。やはり感動しました。なににつけても「命がけ」でやってることには強い信念があって、意味があるわけで、当たり前のことなんだけど例えば命がけの人々がわんさかいて灰色の塊にしか見えなかったら、そこにあるはずの信念や意味も別の形に見えてくるわけで、そう、手に取ることができない真実って結局受け手に委ねられるものだから曖昧なんだよなぁって。それをこんなに的確に、温かく、他人を勇気付けられる言葉で表現できるって本当に「作家」なんだと思ったんですよ。この言葉は命がけだったの違いない。


 わたくしごと。

 10年ぐらい前、せっせと小説を書いていた時期があったけれど、最初はおもしろくって書いてただけだった。最後に書いていたのは、本を読むのが好きで、自分が嫌いで、精神安定剤と友達だった妹へ読んでもらいたくて書いていた小説だった。妹は小説の完成の前に死んでしまったけれど、小説はできあがって、それは自分的にもけっこう好きだっていえる小説だった。それ以来小説を書くことをやめてしまっていた。

 でも、また書こうかなぁという気分になっている。なぜか自分でも分からなかった。でも今日ふらっと思い当たった。「伝えたいことがあるんだ」それだけ。

 伝えたい人がいなかったから書かなかったのかどうかはわからない。でも今は伝えたいことがあるんだ。生まれてこなかったわたしの子供へ、この町で死んでしまった妹へ、もう二度と会えない愛してる人へ、分かり合えないけど血がつながった母親へ。

 形になるのかどうかわからないけど、伝えたい誰かがいる限り書こうと思ったんです。はい。超わたくしごと。

 どんなに好きな相手にでも「伝えたいことがあるんだ」ってのがないと、毎日毎日、どんなにしょうもないことでもそう言えないと、続く自信ないなぁ。