TUGUMI
- 作者: 吉本ばなな
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1989/03
- メディア: 単行本
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今年も読み終えた。ようやく夏が迎えられる。TUGUMIの世界では夏が終わってしまうのだけど、わたしの夏はこれから始まるのだ。
もう覚えるほど読んでしまっていて、正直書くことないんですよねー。おいおい。もうね、風物詩なのよ。これとN・Pと哀しい予感は読まないと夏が始まらないのよ。白河夜船とキッチンは折に触れて読むんだけどね。うたかた・サンクチュアリは微妙に再読率が低いなあ。今年はハードボイルド・ハードラックが読みたいからそのうち読むと思う。この人の文章はもう人生に寄り添ってしまっているので数十分で読み終えてしまえるの。それはそれで哀しいんだけど何度も読めるから嬉しい。一長一短。
つぐみがまりあの手のひらを裸足で踏む。その感触がありありとわかる。いつもいつも体調が悪くて微熱の世界を見ているつぐみの裸足は熱いだろう。でもまりあの手の甲に触れている海の砂も熱いだろう。
権五郎がいなくなる直前のすいかの味は一生忘れないだろう。打ちあがった花火とつぐみの横顔、恭一の立ち姿も一生忘れないだろう。夏はそういういろいろを丸ごと持ってきて(いきなり、どさっと)潔く去ってしまうんだ。
穴を掘りながら微熱でふらついたつぐみの見た夜空はあの世の夜空と同じだったかもしれない。復讐のためだけではなく、自らのどうにもできないものを形にしたら、穴になった。それだけのことだ。しかし「生きてゆけないのよ」という陽子の言葉も正しい。それでは生きてゆけないのだ。
N・PもTUGUMIも手紙が出てくる。哀しい予感はメモね、でも手紙って言っていいのかな。ともかく手紙だ。手紙は書いている時と届いて開かれるときで時間差がある。この時間、この時間が夏じゃないですか? わたしにはこれが夏だから、だから読むんです。毎年。もうぼろぼろさ。