不思議の扉 時間がいっぱい


 不思議の扉シリーズ。こちらはタイムトラベル・ロマンスを除く時間ものの物語たち。

*しゃっくり 筒井康隆
 個人的にはかなり怖い短い物語でした。数分の同じ時間を繰り返し続けるのです。気が狂いそうです。この人の小説は好きなんだけど怖いからあんまり読まなかったのです。いや、でも好きなのよ。ベタですが平沢進のparedeを聞きながら読むと悪夢の浮遊感たっぷりで良いです。パプリカの劇中歌なんだけど、愛してやまない音楽の一つです。

*戦国バレンタインデー 大槻ケンヂ
 タイムトリップものです。ベタです。驚くほどベタです。展開が読めてしまうけれど短いし、なんというか害悪もないので読めるね、うん、大槻くんは病んでるときの小説の方が好きだ。ステーシーはすごかったのに、このベタベタさはどうしたものか。でもわかりやすくていいんじゃないか。

*おもひで女 牧野修
 ホラーと書かれていたので身構えて読んだけれど、あまり怖くなかった。こちらは時間をさかのぼってくる女の話。気持ち悪い。気持ち悪いけどあまり怖くない。でもこれが最強に怖い人はいると思う。過去の記憶の不確かさを最大限に引き延ばした怖さだと思う。

エンドレスエイト 谷川流
 涼宮ハルヒシリーズの一部。繰り返される夏休みの話。ハルヒハルヒがビッグバン的な存在だと知っているから、あ、そうですか、でした。このへんのライトノベルはあまり得意じゃない。アニメで見たとおり、プロット硬いね! プロットと会話だけでなんだか深みが足りないのが少々残念。うる星やつらビューティフルドリーマーも同じタイプだが、あちらは解放感があったのにこちらは疲労感。そりゃ終わらない夏休みは疲れる。

*時の渦 星新一
 一時期ハマって読んでいたんだけど、これは読んでいなかった。最強に怖かったんですけど!!! 時空がゆがんでぽっかり空いてしまった一日を繰り返す、と思いきや実は戻ってる話。こええ、最強にこええ。星さんすごいです。ショートに思えません。読み終わった後に鳥肌立つほどわたしには恐ろしい話でした。

*めもあある美術館 大井三重子
 こちらも読んだことがなかった作品。少年が聞き覚えのない美術館へ行く話。様々な読み方ができる物語だと思う。素敵な風にも悪夢な風にも読み取れる。どちらと読みとっても「あ、そうか。こうしなきゃ」って思える。この加減がとても押し付けがましくなく好感が持てる。後悔はあまりないほうがいい。

*ベンジャミン・バトン フィッツジェラルド
 最近読んだものをもう一度。やはり映画の方が好きです。ごめん。二度目を読んで、これはこれでいいとこがあるように思う。いいとこなんていうと、とても高飛車だけど。表面ばかりが語られているように見えるのだけど、裏側は必ずあるわけで、そこを想像しながら読むとまた違った楽しさが。楽しいというか、でもやっぱり、悲しいんだけど。

*解説 大森望
 いろんな作品が列挙してあって便利です。時間旅行をレジャーと言うあたり、なるほどセンスがいいですね。特に時間に仕掛けがある物語が好きというわけではないですが、タイムトリップ、リプレイ、ループ、どれにしても深みがなければ面白くない。自分の可能な想像力をさらに広げるような描写があれば最高に面白い。筒井さんと星さんのが個人的には大当たりでした。怖いんだけど、どっちも。