春になったら苺を摘みに
- 作者: 梨木香歩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/02/25
- メディア: 単行本
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8つのエッセイと1つの手紙。ウェスト夫人と住人たちとの騒動だらけで素敵な日々。
「理解はできないが受け容れる」という言葉は、安直には使えない。受け容れるということは、そう簡単にできないと思うから。でもこれを読んで少しは分かった気がする。面倒も愛も、なにもかも「受け容れる」ことができる人たちがいるということ。少しでも自分も近づきたいと思う。
このエッセイで一番笑ってしまったのは、ナイジェリアのディディが日本の蕎麦の食べ方についてこう言ったところだ。
それが文化である限り、どんなことであろうと私はそれは尊重する。文化である限りは。
文化の違いを積極的に認めようとするディディが素晴らしい。けど、真面目に言ってると思うと笑える。後にこのナイジェリアの一家は王になるのだけれど。
わたしは日本から出たことがないし、海外の知り合いもいないので、文化の違いってあまり分からない。本やネットやテレビで知るほか術がない。あからさまな人種差別も受けたことがないし、戦争も経験していない。ないないだらけだ、ということを痛感させられた。根っこからひっくり返されるような事態に一度は自分を貶めた方がいいかもな。
「それぞれの戦争」と「夜行列車」は涙を流さずにいられない。戦争と人種差別。わたしは経験していないからお気楽に泣けるのかもしれない。しかし、わたしはやはり戦争は嫌いだ。争い事はたとえかけっこでも嫌いだ。平和ボケすぎるかぁ。でも、どれだけ膨大なお金が稼げようと、戦争で傷つく人がいる限りは戦争に反対したい。やっぱ平和ボケですか。
見たこともない風景がこの本にはたくさん描かれている。梨木さんは国をまたぎながらも「個人の身の上に何が起こったのか」というところをぶれずに日々を見ている。国と国、人種の違いで云々言っていても終わらない。名前を付けてはっきりさせるやり方より、思いやりで埋めたいと思う。度量があるかどうかは分かりませんが。なかなか考えさせられる話ばかりだった。