
- 作者: 湊かなえ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/01/23
- メディア: 単行本
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拍子抜けするほど即効で読めてしまうほど読みやすい。ただ、なにも残らない。なんにも。3人の少女が出てくるけれど、結局見分けさえ付かないままラストを迎えてしまった。いや、本当はわかるよ。わかるけど、大差がないの。個性がないの。違いがないの。なんなの、これは。
まだ1冊目なのでなんとも言えないけれど、物語としての展開が速くて二人の少女が交互に語り部になって、そこが楽しいだけなんじゃないかと。世界があまりにも狭い。隣人と距離1mmって感じ。スティーブン・キングや横溝正史のような「窮屈さ」じゃなくて、ただご近所同士が庭にゴミ投げ合ってるような。
いいのかな。悪意とか善意とか「死」をこんなに軽んじていいのかな。
以前も書いたけれど「若いときほど死に向かう」のは生命力があふれているからだ、と言ったのは吉本隆明。それはね、本当に溢れてるから惜しみなく向かってしまうものであって、憧れたりはしないんじゃないか。少なくともわたしはいじけた青春時代、一度として「死のう」とか「死体を見たい」とか思わなかったけれど。
ある少女の母親のせりふが酷い。うちのママンは厳しいが、そんなことは絶対に言わない。「大学までは」というくだり。自分の子供に対して、そんなこと言う親っていないと、あたしは思いたいよ。
楽天ブックスのインタビュー(コチラ)でこの小説のことについて触れられている。
町を歩いていて、ときどきふと、いま、自分が発作か何かが起きてパタンと倒れたら、そこのバス停のベンチに座っている女子高生たちは助けてくれるだろうか? と想像してみるんですけど、意外と、「あー、あの人苦しんでる」って、指さされて笑われるだけで助けてくれなさそう、って思うんです。私たちが思っているほど彼女たちは親切じゃないかも知れない(笑)。
解せないのはここんとこなんだよ。
ただ、文章は読みやすい、というか軽いからすぐに読めてしまう。そして残らない。なんにも残らない。不思議なほどにね。