- 作者: 遠藤周作,佐伯彰一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/06/13
- メディア: 文庫
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はっきり言って、敬遠していました。だって父の本棚にこの人の本があるんだもの。幼いころ手にとってみたもののさっぱり分からず、自分の読解力のなさに絶望して遠ざかっていました。そりゃチビころにはわかんないわ。ここに書かれていることは、たとえウソ話であろうと真実だ。この矛盾を突きつけられて、目を背けられるわけがないと思う。
警鐘を懸命に打ち鳴らして。言葉にしえない危機感。
もっと小難しい本かと思いきや、なにがなにが。ずんずんと迫ってくる本だった。強制的に読み方を強いて読者を導く本はあるけれど、そういったことはなく、でもきっと誰が読んでも同じカードを突きつけられるだろう。
読み終わって相当たとうとしているのだけど、この本は色褪せない。入り組んだひとつひとつは思い出すたびに色濃くなる。そのものの色はもたない水のように。
横たわる河は、朝日に輝く河であったらと思う。いや、漆黒の河であってもいい。読んでいるうちに余分なものが削ぎとられてゆく気がした。