墓地の書

墓地の書 (東欧の想像力)

墓地の書 (東欧の想像力)


 この居心地の悪さはどうしたものか。思っていたより気持ちが悪くて、居心地が悪くて、言葉を重ねれば重ねるほど善良とはなんだろうか、結局人なんて主観で自らを正当化するためだけに言葉を重ねるんだろうか、と思った。

 チェコという国をわたしはあんまり知らない。どういう歴史で今どうなのかよくわかっていない。しかしそれはあまり関係ない。これが小さな町の小さな一人のサムコ・ターレという人の物語であると同時に、世界のどこでも起こっている当たり前の物語だと思う。社会に左右される部分じゃない。だからこそたくさんの国で読まれているんだろうと。

 そう考えるとすごい物語だと思う。社会に左右されていない、と思ったけれど、人が社会を作っているわけで、社会が人に影響を与えないわけはないのだけど、それを超越したところでサムコは生きて、正しいことをして生きている。ただそれだけの物語なのだ。難しい学術書を開くより簡単に社会のことを考える。今ここで生きてるわたしの価値観はどこからきたものなのかなと。

 知識の量で人間の価値は決まらない。サムコはサムコとして正しい。そんな簡単なことを暗闇並みのブラックユーモアと軽快な笑い、と同時に叫びに近い声で聞くことができる。