王国―その1 アンドロメダ・ハイツ―
- 作者: よしもとばなな
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/08/22
- メディア: 単行本
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読み返しているのですよ。わたしの大好きな雫石という雑でおおらかで清い人の紡ぐ世界をもう一度味わいたい、と。それだけ。
サボテンに愛された祖母と山で暮らしていた雫石は、些細な開発で山を追われてしまう。祖母はちゃっかり恋人を作っていて、海外に行ってしまう。雫石、天涯孤独。しかし図太いので生き延びる。
楓と片岡さんと出会う。片岡さんのずげずげ感は「王国その4」と全然変わらない。嫉妬深くて嫌味な人で、しかし本当は心が広くて弱いものには優しい。もしかしたら、男の人ってこんなのかも、と思う。妊娠も出産も生理さえも経験しないのだから、変えようにも変えられないのかな、って。
読み返してみて、楓ってかなり無茶する破天荒な男の子だなと思った。非を自分に持っていきがちだが、彼のやり方がそうであるから仕方がない。経験していないことを見ることができるということは、どれぐらい大変なことだろう。楓はその超能力っぽいものを生業にしている。本気なくせに、なんかちょっと世間に対して甘い。だらしない。それをサポートする雫石。
サボテンと会話するとか、気持ちを通わせるとか、雫石のようにやることは想像がつかない。でも、うちにも植物はある。わたしの生活に合わせてもらってるから成長が遅い。ごめんね、と思う。いつか自然に合わせた時間を持たせたいと思っている。今は少しだけ我慢してね。こういう気持ちを持つことと、持ってることを思い出させてくれる物語だ。雫石の小さな恋はまだあまり描かれない。でも読後感は相当に満足。
会社員をしていると、決まった時間に決まった場所に行かなければならない。そこが最初は居心地よくても、風向きひとつで居心地が悪くなる。それでも行かなければならない。会社員を続けるのであれば。
ここに出てくる人はみな「会社員」じゃない。やりたいことをやってる人々だ。こういうライフスタイルが築ける人は多くないだろう。でも、この物語から得る心の持ち方はあると思う。少しだけ、自分も健全になれる気がする。
しかし、ばななさんは同じことばかり書いてるよねぇ。でも大切なことってそれだよねぇ。