生きることは物語を作ること、をテーマに日々哲学するブログ

生きるとは自分の物語を創ること

日々のじだんだ ~見習いみかん農家4年目~

N・P

ビブリオバトルなるものをしてみようということになり、まず思いついたのがこの本だったので再読。改めて、いい小説だなあと思う。

さてここからはビブリオバトルの練習もかねて、この本を選んだ理由やら推しポイントやらをまとめてゆこう。

作者の吉本ばななさんについて、名前はご存知の方も多いだろうと思う。1987年キッチンでにデビューし、1989年に二作目のTUGUMIと共にベストセラー。一躍時の人となった作家さんです。

N・Pはその後1990年に発行された、ちょっと古い本です。

正直言ってキッチンやTUGUMIに比べたら印象の薄い本かもしれないし、読む人を選ぶタイプの本かもしれない。

ビブリオバトルというゲームの性格上、もっとライトな読み物や、誰もが知っている有名だけど何らかの理由で(例えば長いからとか、売れ過ぎたからとか)読みそびれていた本や、読めば勉強になるような本などをチョイスする方が勝てるのかもしれない、とは思った。

けれど、最初にこの本が浮かんできたのには理由がある。それは、実家に帰って親と一緒に暮らしている今こそ感じる「血の呪い」みたいなものを、例えば具体的な行動や思考のパターンが似ているとか、あるいは手の形や声がそっくりとか、そういう部分だけでなく、血が繋がった者同士だけだとどうしたって行き詰まって破滅しか想像ができなくなるような、そんな断ち切れない負の螺旋階段みたいなもののことを考えさせてくれる小説です。

この小説はWikiに「激しい愛の物語」って書かれてるんですけど、確かに恋愛のことも書かれてるんだけど、恋愛のことだけ書かれてるわけじゃないんですよ。むしろ人が強く誰かを思うことって、それが家族であっても他人であっても、熱量的に恋愛と変わらんのなら、それはもう全部ひっくるめて「愛」と呼んでもいいと思うんですよね。例え憎しみであってもですよ。

でね、農業って仕事は体力的にも肉体的にもしんどいことはよくあります。だけどそれ以上にしんどいのは人間関係で、ってことは家族関係ってことも多いいわけです。ってかうちはそうです。

そこはもう何十年も繰り返されていて終わりが見えないから重いんですよね。もうね、抱えきれないぐらい重い。だけど、その重さに押しつぶされそうになりながらも、それが愛だと分かっているから壊すことも手放すこともできない。よくできて「距離を保つ」ぐらいのことです。

だけどね、これを読んで思ったんです。私は何も打ち明けていないけど、それに小説の中で直接的な答えとか解決策なんてなにひとつ書かれていないのだけど、でも、自分が何を抱えているものがなんなのか、その秘密の正体が少しわかった気がして、そしてその自分が過去にいることに気づいて(っていうことは、今はもうその秘密を打ち明けて気持ちが軽くなってる自分に気づいてってことなんだけど)、そんな小説だから、やっぱりこの小説でバトルに挑もうって思いました。

ちなみに、作中では血縁関係のない第三者の存在がとっても大きなインパクトになっていて、それは現実世界でもそうだよなあと思います。濃い血のつながりの中に入る第三者って劇薬なんだよね。でも、そうすることによって人は破滅せずに生き続けてこられたんだと思ったりもします。そんな世界の縮図感もちょっと味わえるかもしれません。

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夏の描写が秀逸なんだが、夏の描写までたどり着かんかった。これ読み上げて5分以内におさまるかなあ。結果は追記で書きます。