ヒミズ1〜4
- 作者: 古谷実
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/07/13
- メディア: コミック
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先日見た映画の原作。ギャグなし。
「行け!稲中卓球部」は高校生の頃バカみたいにはまったコミックだった。底抜けにバカなのに、超下品なギャグなのに、腹が痛くなるほど笑ったのに、なんでか傷跡が残ったの。それは主人公たちと近い年齢であったから分からなかったけれど「そこから抜け出せない感」が共通していたからなのかな、と今なら思う。抜け出せないからギャグってもがいてたんだ。
映画「ヒミズ」を見てから読んだのでだいたいのあらすじは分かっていたけれど、これは全く違うものだった。個人的にはコミックを読んで納得。
人間は弱いものだ。殴られたら痛いし、殴っても痛い。クズから生まれる人間はクズなのか。そうじゃない、自分は違う。だって怪物が見える。ずっと自分を見つめている怪物が見える。
主人公は自分を律しているように見える。堕落しているようにも見える。どっちだっていいんだ、たぶん。世界は勝手に回って頭のおかしい人間はどこにでもいてどこかで誰かが死んでいる。
俺は人に迷惑をかけないから。頼むから俺にもだれも迷惑をかけないでくれ
真っ当だ。真っ当な人間が正しいとは限らない。全うなことを言う人だから正しいとは限らない。人助けをする人は正しいとは限らない。逆に、人殺しをする人が悪い人とも限らない。行き場がない。よくある話だ。救いがない。だから善良であろうとする。しかし善良であろうとすればするほど悪人になる。作中では「病気」と呼んでいるけれど、その病気のリアリティさが痛い。
わたし的に、この哀しさの近似値は高橋源一郎のさようならギャングたちだな。
思春期に一度ぐらい考えることのひとつを、そのまま形にしたらこの4冊になるんじゃないかと思う。一度ぐらいドストエフスキーの罪と罰を手に取ろうと思うでしょ。「罪」と「罰」を。たった4冊で描いていると、わたしは解釈する。