生きることは物語を作ること、をテーマに日々哲学するブログ

生きるとは自分の物語を創ること

日々のじだんだ ~見習いみかん農家一年目~

パラサイト 半地下の家族

パラサイト 半地下の家族(字幕版)

パラサイト 半地下の家族(字幕版)

  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: Prime Video

 先日、感受性だの五感だのを磨かないと腐れるぞと書いておきながら、久しぶりの映画。話題になった時から見たいなあと思っていたけど、思いのほか金曜ロードショーに出るのが早かったと思う。アカデミー賞を取ったからだろうか。少し前なら地上波で流さないような映画だと思う。

 かなりの暴言だと思いながら書くけれど、人は少々アホになっていると思う。というのも、売れるものを見る限り「分かりやすいもの」が好まれているように感じるからだ。分かりやすいものが悪いとは思わない。私も分かりやすいものを楽しんでみることもある。ただ、分かりやすいものは薄っぺらくて考える余地を与えないものが多い(だから分かりやすいのだと思うけど)。

 書いてて思ったけど、これ今に始まったことじゃないね。

 映画の世界は、ドラマの世界よりずっと複雑で言い表しにくいものに挑戦し続けていると思う。ぶっちゃけ、始終面白くなかったなーという映画もある。でも、なんだか良かったり、なんだか忘れられなかったりする。その「なんだか」を言葉にしようとするとき、私たちの感受性や感性や倫理観や正義感が育つのではないかと思う。

 で、パラサイト 半地下の家族。韓国では高台ほどお金持ちが住んでいるらしい。ということは、地下や半地下は底辺の人が住んでいるということ。その半地下暮らしの家族が、お金持ちの家族にパラサイト(寄生)してゆく物語だ。

 私はこの映画を、中途半端な普通の人たち(ずば抜けて賢いわけでもない、ずば抜けて善人でもない、ずば抜けて悪人でもない、ずば抜けて覚悟が決まっているわけでもない、ずば抜けて憎んでいるわけでもない)が、少しのずる賢さと、少しの善意と、強靭な生命力によって、「生きようとした」物語だと思った。 

 ラストの展開はとても衝撃的で、たぶん私たちが「事件」として見るときにはこの部分だろうけど、ここまでの道のりに、特筆するべき怨恨や怒りがなかったとしても、こういう事態は起こりうる。

 個人的にグッと来たのは、パラサイト家族の父だ。なぜ最後にあんな行動をとったのか。ちんけなずる賢さでお金持ちをだました程度ならば、たいした刑罰もないだろう。いくら計画性がなくても、その一線を超えることがどれだけ自分に不利なのかは分かるだろう。だけど、その一線を超えさせるものがあったのだ。それがなんだか「分かる」気がした。

 どんな人であっても、プライドは持っていると思う。今まで生きてきたという自負。誰かから見たらカスみたいな人生だとしても、その時々の精一杯で選んで積み重ねてきた時間が「人生」だから、そこにはプライドがあるものなんじゃないかと思う。

 ささやかで、家族ですら気づかなかった彼のプライドが、お金持ち一家の父が「眉をしかめて鼻をつまんだこと」によって、完全な拒絶、否定、あるいは、自分には気づかなかった「半地下暮らしの臭い」が金持ちには耐えられない臭さだということが、パラサイト家族の父のプライドを打ち砕いたのではないかと思って、息ができないほど苦しくなった。

 他人から見てどんなにクソみたいな人生であっても、全然知らない他人に煙たがられるいわれなどない。だけど理解しようとしない人に、無理やり顔を押さえつけて理解させる必要もない。だけども、とても自分は傷ついた。そういう経験は誰にでもあるんじゃないかと思う。だからその痛みは、理解できないものではなくて、理解できるものなんだと思う。

 上手く言えないけど、プライドを傷つけられる痛みは、悔しいでも、辛いでも、悲しいでもないような気がする。あえて言えば、絶望という言葉が一番しっくりくる気がする。

 プライドを傷つけられ、砕かれる痛みが、とにかく刺さった。私はその絶望を知っていると思った。でも、その絶望を知っているから、理解できることがあるんじゃないかと思った。

計画するから計画通りにいかないんだ。ノープランが最強だ。

 楽天家のパラサイト父のセリフがとても刺さる。

 この世界は、この人間の世界は、とても脆くて儚くて、不確かであいまいで、そんな中で私たちも泣いたり笑ったり傷ついたり傷つけられたりして、生きているんだと思う。生きることへの強欲さ、同時にパワフルさを感じられるこの映画は、一見の価値があると思った。

 ちなみに、ポン・ジュノ監督の映画は「ほえる犬は噛まない」「グエムル-漢江の怪物-」を見た。グエムルはなんか好きで何度も見た(比較的わかりやすいのでお勧め)。同じ監督だと思っていなかったので、私はポン・ジュノ監督の映画がけっこう好きなんだと思う(暇つぶしに見たい映画ではないけど)。

 日本の社会派映画監督といえば是枝裕和監督だろう。ほんとこの人の映画は心臓が痛くなるから何度もは見れない。

cimacox.hatenablog.com

 韓国発のフェミニズム小説。でもフェミニズム以上のテーマがたくさん詰まっていると思う。
cimacox.hatenablog.com

 ちなみに、初めて読んだ韓国の小説が「菜食主義者 著ハン・ガン」。すごいパワフルさに圧倒された。

菜食主義者 (新しい韓国の文学 1)

菜食主義者 (新しい韓国の文学 1)

  • 作者:ハン・ガン
  • 発売日: 2011/06/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)